「あ!そうだ!茉弘。今日の夜、ちょっとここ抜け出すよ。」
百合さんは、小声であたしに耳打ちする。
「え?何で?」
「この間いいもの見せたげるって言ったでしょ。茉弘が恭を好きにしろ、好きじゃないにしろ、あいつの事ちゃんと知っておいた方がいいと思うんだ。」
「……恭の事って?」
百合さんは、顔の前に人差し指を立てる。
「それは、今は内緒。ちゃんと自分の目で確かめた方がいい。」
「……うん。でも、恭が見張り付けるから外に出るなって……。」
「ふふん♪そこは任せてよ。」
百合さんは自信有りといった顔。
また一つ、恭の事を知ることが出来る。
なんだろ。
正直ちょっと怖い。
これ以上恭を知ったら、あたしはもう引き返せなくなってしまうんじゃないかな。
あたしの知らない恭を見た時、あたしは何を思うんだろう?
でも、それでも恭の事を知りたい。
その気持ちだけは、止まらない。
それにしても、百合さん任せてって……本当に大丈夫なのかな。