「もう一個もらっていい?」
「どうぞ」
「いやあ、これ本当に美味しいよ。こんな美味しい料理なら毎日食べたいな」
心臓がギュッと締めつけられた。優しい笑顔で私の作った料理を食べてくれている。
「ありがとうございます……」
だめだ。横山さんの顔がちゃんと見れない。照れて顔を上げることができない。
「こっちの肉巻きもいい?」
「どうぞ……」
「あ、僕ばっかりごめんね。北川さんのご飯なくなっちゃうね」
「いえ……お口に合えば嬉しいです」
「うん。これもうまいよ!」
横山さんは夢中で食べている。もう私のお弁当全部を横山さんにあげてしまおうか。
「ごめん、少なくなっちゃった……女の子でもこれはさすがに少ないかな? 僕の唐揚げ食べる?」
横山さんは買ってきたお弁当の中から唐揚げを3つ私のお弁当箱に入れた。
「あはは。ありがとうございます」
嬉しすぎて笑ってしまう。横山さんとお昼を食べて、おかずを交換して。こんなこと、過去の私からは想像できなかった。
もう横山さんに夢中だ。笑顔も、肉巻きを頬張る顔も、私を気にかけてくれる優しいところも。
今自覚してしまった。憧れだけじゃない。私は横山さんが好きなんだ。
「そういえばさ、あの会社の人って飲食店とかの装飾もやってくれるかな?」
「え?」
横山さんの視線の先を見た。
食堂の真ん中に置かれた観葉植物を、いつの間にか椎名さんが手入れしていた。彼が食堂に入ってきたことに気づかなかった。