たいまつが村のあちらこちらに据え置かれ、全てを覆い隠そうとする暗闇を押しやるように辺りを煌々(こうこう)と照らし出す。

 孤独ではないのだと鳴り止まぬ虫の音は睡魔を導き幼子を安らかな眠りへと誘(いざな)う。

 されど、今宵ばかりは微睡(まどろ)みすらも逃げてゆく。

 親たちはきかぬ子らをやむを得ず家屋から送り出し、子らの帰りを持ちわびながら明日の準備にいそしんだ。

 ──男は集まった人々をゆっくりと見回し、思わせぶりに低く語り始める。

「ドラゴンは乗り物になるものから神に近いものまで様々だが、あの洞窟にいるやつは、まさに神のようなドラゴンだ」

 渡り戦士の話はラーファンの目を輝かせるに足るものだった。

 ドラゴンを倒す騎士の物語は最もラーファンの心を震わせる。

 幾度も朗読を頼まれたナシェリオが本の内容を全て覚えてしまったほどだ。