「賢斗くん、ごめんねっ」
冬休み前の昼休み、学校の奴らから赤ずきんと呼ばれる美少女、赤槻郁(アカツキ イク)は俺に謝罪をした。
俺は気がつけば郁から下の名前で呼ばれている。
「ごめんって、なにが」
「お正月、初詣に行こうって誘ったじゃん」
大神賢斗(オオカミ ケント)。不良高校生というレッテルを貼られて、一匹狼になった高2の俺は同じクラスの美少女、郁に告白され、色々あって、付き合っている。
「初詣の話は初耳なんだけど」
「そうだっけ?じゃあ、初詣一緒に行こう!」
「別に、いいけど」
「でもそれがダメになったの!」
郁は(´・ω・`)の顔文字の様にしょぼんとする。
俺みたいな奴は郁みたいな可愛い女子と不釣り合いだから、俺は郁に嫌われる為に日々努力をしている。
でも郁に惹かれている俺もいた。
しょぼんとする郁に食べてしまいたい位の愛しさを感じるが、そこを隠しつつ会話を続ける。
「なんで初詣行けないの?」
「パパの実家に帰ることになったの」
「帰省ねー。千葉県?」
「違うの。オーストリアなの」
「オーストラリアかー。あんまり時差無いし」
「オーストラリアじゃなくて、オーストリアだって」
郁はくすくすと笑う。
「大晦日辺りからウィーンに向かうから、日本にいないの」
「そうか。まぁ、寂しくなんか無いけどな」
俺はそう言いながら郁の手作りドーナッツを口に入れた。
甘くて、ふわふわして美味しい。