「うおあぁぁ~!?」


風を切る音に混じって、浄火の悲鳴が聞こえてくる。


まさか空を飛ぶなんて夢にも思っていなかったんだろう。


上空に向かって急上昇するにつれ、浄火の悲鳴も上向きに引っくり返った。


「おわ!? おえ!? おうおぉ~!?」


「浄火君、耳の後ろで奇妙な声を上げるのは止めてくれないか?」


「おひょ!? ひょおぉぉ~~~!?」


「浄火君・・・・・・」


あたしは列の先頭で浄火の雄叫びを聞きながら、苦笑いした。


その気持ち、すっごく分かるよ浄火。


あたしも初めて絹糸の背に乗って空を飛んだ時は、死ぬほど怖かったもん。


今でもビビッちゃうし。


あたしの後ろのセバスチャンさんが、しっかり腰に手を回して固定してくれているから安心感があるけど。


「浄火、大丈夫? 怖かったら絹糸の体毛を、思いっ切り鷲づかみしなよ」


「やめい。ハゲるわい」


「だ、大丈夫だ! オレはこんなのまったく平気だ! ははは・・・」


「平気なら僕の腰に両腕を回して密着するのは、やめてくれたまえ」


「だだだ、誰がお前の腰なんかに・・・!」


「だから、耳の後ろに息を吹きかけるのはやめてくれたまえ」


「お、見えた! あの屋敷だ! 猫、下りろ下りろ!」


見おろす視界の前方に、この島の建造物にしては大きな屋敷が見えてきた。


木造の平屋の細長い建物が、小山の裾地にポツンと建っている。


あれか! 悪の巣窟は!


お岩さんお待たせ! もう大丈夫、助けに来たからね!