「やっぱ浄火ってさ、どっか勝海舟っぽいよね」


「カツカイシュー? なんだそりゃ?」


「勝? ・・・おやまあ! あんた勝のヤツと知り合いだったのかい!?」


足元をスルスルと進んでいた主さんが驚いたような声を上げ、首を持ち上げた。


「へ? あ、いや、知り合いってわけじゃないですけど」


「こりゃ驚いたねぇ! あたしも勝のヤツとは見知った仲なのさ!」


「・・・はあぁぁーーーーー!?」


あたしは思わず目を剥いて叫んだ。


主さんが勝海舟と・・・知り合いぃー!?


そ、そっちの方がよっぽどビックリな事実なんですけど!?


「あたしの正体はバラしちゃいなかったけどね。気まぐれに少しの間、普通のヘビのふりして一緒にいたのさ」


「それホント!?」


「咸臨丸、とかいう船に乗ってね、メリケン国まで行ったんだよ」


「メリケン国ってアメリカだよね? それってまさに万延元年遣米使節じゃん!」


うわ、うわ、うわ! 歴史の生き証人が目の前にいる!


うわあぁ、すごいーーー!


「嵐には遭うし、大変だったよ。じょん、とかって名前の男が実に良く働いてくれたさ」


「それってジョン万次郎!? 主さんってすごい!」


「ふふん。あたしゃこう見えてねぇ、時代の最先端を知るヘビなのさ」


いや、さすがに幕末は最先端とは言わないけど・・・。