「今日はシチュー!!」
男が走りながら、後ろにまわりこんだ。
後部座席側の窓から入るつもりだ!

俺は高鳴る心臓を抑えながら、その機を待った。
窓から侵入した瞬間、ナイフで刺そうと考えたのだ。

そんな戦略を考えれば考えるほど、なぜか頭はひどく冷静だった。
さっきまでパニックだったのに。

何をすべきか気持ち悪いくらいに浮かぶのだ。
まず・・。

「あっ!!」
男が叫ぶ。
伸ばした腕に斬りつけると、車のドアを蹴るように開けた!

男がドアにぶつかって吹き飛ぶ。
「うるせぇ!!ぐぉっ!」
男が支離滅裂な事を言いながら壁に体を強打した。
俺は馬乗りになり、ナイフを突き立てる・・。


体の空いた穴から、水の混じった泡を吹き出し絶命する男。
尽かさず、女性を追いかける・・。
ハッシュの上からの援護もあり、サラダ用のトングを持ったまま玄関前に倒れこんだ。

園田一家からしてみたら、俺らは何なのだろうか?
見る限り、妄霊達は同じ台詞をうわ言のように繰り返している気がする。
橋本エリアマネージャーの時もそうだ。
まるで仕事の呪縛から離れられないように、接客しながら殴ってきた。

それを狩る俺らって何だ?
ハッシュって、何者なんだ?

俺は、どうして女性を切り刻んでいるんだ・・?

ふと、女性の残骸の奥に2つの光があった。
女性の残骸の奥に・・。

「トモヒー!トモヒー!!しっかりしろ!!」
2つの光は、ハッシュの両耳についたシーリングライトだった。
気付いたら身体中、ヌメリ気を帯びた液でベトベトになっていた。

「トモヒー、すごいのを見せてやんよ。」
ハッシュはヌメヌメになった俺の髪をかきあげると、興奮したように言った。