旅行からの電車の中。

席は変わらず、私は澪鵺の隣。

花菜は久保田くんと、知紗は恭真と。

2人とも、凄く仲良くなっている。

前後から、楽しそうなお喋りの声がする。



しかし、私たちは、一切話さない。

澪鵺は行く時「読み終えた」と言っていた本を読んでいる。

その目は・・・何も宿っていない、茶色い瞳。

頑張って話題を探して話しかけても、何も言わない。

恭真や久保田くんに話しかけられると、返事するのに。

笑うのに。

私には、何も話さないし、笑わない。




それが凄く寂しくて、哀しくて。

私はずっと窓ばかり見た。




「紅羽、元気ないね」

「チサたちで良ければ聞こうか?」

「・・・花菜、知紗」



2人に連れられ、私はトイレへ行った。

幸い誰もいない。



「話してみなよ」

「友達の悩みは、チサたちの悩みだよ」





優しいな・・・2人とも。