「では…早速、参りましょうか?」

「どこへ行くというのですか?」

少女は私の問いかけには何も答えず、祠の格子戸に手をかけ、私の方を振り向いた。

「着いて来て下さい。」



それは、非常に強い意思を持った視線だった。
有無を言わさぬ厳しい視線……

一体、何が始まろうとしているのかもわからないままに、私はそれを拒むことは出来ない状況にあった。
私は、何も言わず少女のすぐ後ろに立ち、今から起こる事を待った。



それは、一瞬の出来事だった。
少女が、格子戸を開き私達が中に踏みこんだ瞬間、そこは違う場所になっていた。

だだっ広い空間……
床も壁も、そして高い天井も、まるで、氷のように透き通っている。
私の足音だけが、その広い空間にこだまする。
少女は、真っ白な足袋を履いているせいなのか床の上を滑るようになめらかに歩いていた。
格子戸から、真っ直ぐに歩いた先には台座があり、そこには四角い箱のようなものが置かれていた。
咄嗟に、私はそれが柩だと直感した。
私のその考えが正しいのか間違っているのかはわからないが、傍目にはとにかくそう見えたのだ。

少女は、箱の前に跪き、恭しく頭を下げると、なにやら祝詞のようなものを唱え始めた。
私は、どうして良いかもよくわからず、とりあえず、彼女と同じように跪き、頭を下げ気味にして彼女の様子を伺っていた。



……長い祝詞だった。
それがすむと少女は、柩の裏に回り、小さな箱と剣のようなものを持って現れた。



「行きましょう。」

少女は、柩の右側の壁に向かって歩き出した。
私は、何もわからないまま、少女の言いなりに着いていく。



扉の前に着くと、私は少女から先程の剣を手渡された。
ずっしりと重い剣だ。



「では、お待ちしています。」

「待つ?何をです?
それに、この剣は?
私に何をさせようと言うのです?」

「それは今言わなくてもいずれわかること…
では、お気を付けて……」



少女はそう言うと、小箱の中から鍵を取り出し、その扉の鍵を開けた。

ここでも、私に選択肢はないようだ。
諦めた私は、剣を腰に携え、扉を開いた。