☆彩音side☆
ふかふかとした布団の上で、私は目が覚めた。
目に映るのは木の天井。
辺りを見回すと、ここは蔵ではないことがわかった。
あの薄暗い蔵ではなかった。
何故自分が布団で寝ていたのか、わからなかった。
つい先ほどまで、拷問をうけていたはずだというのに。
そのとき、スッと襖が開いた。
「あれ?起きたの?」
入ってきたのは、あの青年だった。
彼は膳のようなものを手に持っていた。
撮影で見たことがあったため、それが食事だということがわかる。
「はい。これ朝餉だから、少しでも食べな?」
少しでもと言われても、全くお腹はすいていない。
自分でも不思議なほどだ。
私は青年にいらない、と言おうとした。
そこで、ある違和感に気づいた。
───声が、出ない?
声が、まったく出なくなっていたのだ。
私は気づかれないように無言で箸をとり、食事に手をつけた。
といっても、おかずのみだ。
「………もう食べないの?」
私は頷いた。肯定、という意味合いで。
「どうして喋らないの?」
その問いに私は答えることができない。
できるはずがない。