(……また、だ)


きい、と小さく音を立ててそっと下駄箱を開く。

自分の足のサイズより少し大きめのスリッパ。母さんがでっかくなるだろうと意気込んで買ってきたのだ。


その上に置かれた、一枚の手紙。

差出人も、宛先も何も書かわれていない真っ白な便箋。


(懲りもせず、何回出してんだよ。こいつ)


手に取って、裏返して見ても透かして見ても、ただただ真っ白な便箋は

俺が高校入ってすぐからずっとずっと数日置きに置かれている。


入学式当時は何かの嫌がらせか、と差出人を割り出そうと騒いだものだけれど、結局犯人らしき人は見つからず、こうして宛先も差出人もない真っ白な手紙はずっと俺に送り続けられるのだ。



「よーっす」


ふいにばんっと背中をたたかれて、俺は顔をあげた。