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「つまり、シキ姉さんの記憶が2891分しか持たなくて、それを継続的に覚えるためには誰か知っている人が必要ってこと」

「なるほど理解した、……多分」

次の日、俺と香澄は特別棟の空き教室で話し合っている最中だった。

昨日は大変だった。

あれから、俺が記憶を無くしてしまうことをシキとともにしどろもどろに説明して、シキがここにいるってことを伝えてほしいということを何とか説明した。

という説明も、シキと香澄から聞いたものなんだけれど。

上手く説明できないけど、自分の記憶にないものがあるってことが不思議で、これが現実なんだと理解するのには結構時間がかかった。


ここまで自分が石頭だとは思わなかったけれど。


「でも、変な話だよね。なら、俺じゃなくてほかの奴に頼むんじゃない」


「……それは、失敗した、らしい前の俺が」


「ふうん」