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今にも雲に隠れそうな夜空に浮かぶ月をぼんやりと眺める。


あれからどれぐらい経っただろうか。
先輩との電話を切ってから行く当てもなく歩き続け、気が付いたら隣街まで来ていた。

私の地元よりも栄えているここは眠らない街と言われるだけあって、夜になっても人や車が多い。

だから、どんなに泣いたって誰も私を見たりしない。


駅前広場に着くと、一番端にあるベンチに腰を掛けた。

広場の時計は、午後8時半過ぎを指している。
先輩から電話が来てからちょうど1時間が経っていた。


「もう…駄目なのかなぁ…」


電話から聞こえた二人の会話が頭から離れない。


誰が言い始めたかわからないけど、先輩と彼女は“相思相愛”。

それが何となくわかる気がした。

会話の内容もそうだけど、先輩の声や話し方が彼女にだけ違って聞こえたんだ。