【創side】

 俺の部屋で、初デート。
 しかも、家族はいない。

 男にとって、こんなチャンスを生かさないわけがない。

 でもこれは、一般論だ。
 俺にとって、彼女と二人きりになるということは……。

 素直にラッキーって、喜んでいられない事情がある。

 それは……
 俺が俺自身と闘わなければいけないからだ。

「ねぇ、創ちゃん」

 礼奈が俺の後ろから抱きついた。背中に礼奈の温もりと、ふっくらとしたマシュマロのようなバストの膨らみを感じた。

「うわわ……よせ、礼奈、離れろっつーの!」

「どうして?」

 大きな目をクリクリさせて、礼奈は背後から俺を見上げる。色っぽい眼差しに長い睫毛がふわふわと揺れた。

「……なんでって、抱きつかれたら困るんだよ」

「だからぁ~どうして困るの?」

「……っ、それはその……何でも困るんだよっ!」

 俺は十八歳の健全な男なんだよ!
 抱きつかれたら、心は理性を保てても体は反応してしまう。

 だけど礼奈はそんなこともわかってるんだか、どーなんだか。

 やたらと俺にベタベタと抱きつく。
 まるで瞬間強力接着剤みたいに、一度くっついたら離れない。

「あのね、創ちゃん我慢すると体に悪いんだよ」

「はぁっ!?」

 俺は思わず声を張り上げた。体に悪いって、こいつ……意味わかって言ってるのか?

「ねぇ、創ちゃんと礼奈は付き合ってて、創ちゃんは礼奈の彼氏なんだよね?」

「……そうだけど」

 俺に抱き着いたまま礼奈が問いかける。

 わかりきった質問を、幼稚園児みたいに何度も問いかけ、唇を尖らせ俺の耳に『ふぅ〜』と熱い息を吹きかけた。

 お前は小悪魔か。