私の世界にあるのは……。
もの言わない星空に、
遠くに見える都会の煌き。
髪をなでる冷たい夜風に、
籠に囚われた鳥のさえずり。
変わり映えのないすべてが、
私の心を虚しくさせる。
このまま、ひとりで生きていくんだ。
そう思っていた私の前に――。
――突然、きみは現れた。
鳥籠の扉をこじあけて、
不敵に笑いながら、私に手を差しのべる。
「ここから連れだしてやる」
その背に浮かぶ月。
その瞳に映る強さ。
絵本の中の王子様みたいに、
きみなら私を、どこか遠い……。
まだ見ぬ世界へと連れさってくれるって、
そう思えたんだ――。
※この作品は2月25日に発売した
「月がキレイな夜に、きみの一番星になりたい。」の
試し読みとなっております。
また、『一番星のキミに恋するほどに切なくて。』
のリンク作品ですが、この作品単体でも
お楽しみいただげます。