ようこそゲストさん
「早く! 置いてくよーっ!」
「おい、走んなって」
カップルがそんな会話を交わしながら、私の背後を通り過ぎていく。
今日はクリスマス・イブ。彼らと同じように、私も彼氏とデートに出かける予定だ。
しかし、肝心の彼は現在、先生に呼び出され中。来るまでツリーでも眺めているとしよう。
毎年思うけど、溜息が出るほど綺麗。てっぺんの飾りが野いちごなのも、この学園らしくてステキ。
「だーれだ」
両目を手で隠され、大好きな声が耳に響く。思わずニヤける。
「ごめんな、お待たせ」
「寒かったろ」と心配してくれる彼に、ツリーの魅力を伝えた。待ってるのは全然苦じゃなかった、と。
「……ふーん」
彼の様子がおかしい。
「もうちょっと寂しがってるかと思ってた」
身につけていたマフラーを、私の首に巻きつける。
「ツリーに感動してるのすげえ可愛いけど、今日は俺のことだけ見て?」