―もっと、刺激的な恋を。―

捻りの効いたストーリーとキャラ、今回も楽しませてもらいました！
まず、このお話のヒロイン華って、かなりヤベぇなと思いながら読み始めました。
そして、乙ゲーや女性向け恋愛小説の男をぶった斬るような登場のさせ方をした、それでいてその種の男そのものの桐谷。
どうなっていくのかと思っていたけど、いつの間にかこの二人の恋の行方が、せつなくてせつなくて。
いいですねぇ、このハイスペ男と妄想処女の組み合わせ。
可笑しいんだけど、キュンとさせてくれました。
ところで、このお話で私が一番好きなキャラは、実は小森。
最初はあざとくてやな女だなって思ってたけど、実は小森カッコいいじゃん！て思っちゃいました。
河本は好きになれなかったけど、こういう脇のキャラもしっかりしていて、いろんな角度から楽しめました。
しつこく、脇キャラのスピンオフ希望しておきます(笑)

このお話は、孤独だった若い二人が出逢い愛を育む物語。
一言でいうとこうなるでしょうか。
人は誰しも何かしらの孤独を抱えて生きているものです。
それは、この物語に出てくる人たちもそう。
そして孤独は、人の心を蝕む。
その典型は、伊織の母親であり自死した同僚なのだと思います。
その一方で、伊織や凌、そしてスナックのママゆりのように、ギリギリのところで踏み留まり生きている人たちもいます。
その違いは何なんだろう…そう考えて、ベタではあるけど、それは「愛」を知っているか否かなのだと思いました。

比較的短いストーリーに、ギュッと詰め込まれた伊織と凌の愛の物語。
時間の経過など描写に無理ながなくて、もっといろんなストーリーや、長編を読んでみたいと思いました。
私もハッピーエンドが好きだから。

最初の夢は、あぁ、切ないなぁ…でも、年下くんの熱い思いに胸がキュンとくる。
その夢が夢だと知って、え？そうなんだ、と。でも、またキュンとしてしまう。
そして、その夢がまた夢だったと知ったときに包まれるほのぼのとした幸福感。
ショートストーリーながら、ヒロインの心の逡巡を読み手に与えてくれる佳作です。