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「明里、なんで今日傘持ってきてねーの?
朝の天気予報で雨降るって言ってただろ。」






わたしと悠太くんの間にある傘の柄。





少し傾いているそれを、わたしはさりげなく押し返した。






「今日に限って見てなかったんだもん。」





「ばっかだなー。」





すぐにまたわたしの方に影が降りて、傘の柄がわたしの方に傾く。





「朝は快晴だったから、油断したんだよ。」





またそれを押し返すとーー






「ずぶ濡れにならなくてよかったな。」





すぐにわたしの方へ傾いてくる。





「……悠太くん。」





「ん?」





悠太くんの顔を見上げるとーー
その視線の先に、一部深い色が滲んだ制服が目に映った。





それを見て、わたしは悠太くんが手に持ってくれてた傘の柄を半ば強引に奪って。





「わたしのほうに傾けないで…
悠太くんの肩、濡れてるよ。」





悠太くんがすっぽり入るように傘を持つと。悠太くんは一瞬キョトンとした顔を見せてーー






すぐにくすっと笑った。





「女の子の特権だろー。
気にしなくていいのに。」