(……あ……)
聞くつもりなんて、なかったのに。
"悠里は、颯真が好き?"
そう聞いたのは、まるでわたしじゃないみたいに……夢心地。
だけど、驚いたようにわたしをまっすぐに見つめる悠里を見ていると、現実感が湧いてくる。
わたしを直視していた悠里は……
しばらくすると、伏し目がちにわたしから目をそらして。
「……えへへ。」
そう、はにかんで笑った。
肯定の意味を示す……恋をしている笑い方。
「……あたしね、お父さんも早くに亡くして。
男の兄弟もいないの。
家族はお姉ちゃんと、お母さんだけ。」
すっかり手が止まってしまったわたしのハッチキスを手に取ると、パチン、パチン、とめていく。
「だからかな……。
同い年なのに…大人っぽくて、周りに気をきかしてくれて…優しい。
そんな颯真君に惹かれるの。」
「悠里……」
「へへっ。明里にはバレてたんだね!
もしかしたら、佐奈ちゃんにもバレてるかな?」
"内緒にしてね"
そう人差し指をあて、嬉しそうに笑う悠里を見てると……
以前のような、醜い嫉妬心さえ、出てこなかった。
悠里は、わたしの気持ちを知らない。
以前に、ただの幼馴染みだと言ったのはわたしだから。
もっと、悠里の性格が悪かったらよかったのに。
もっと、嫌な女だったらよかったのに。
そしたら…わたしも今、自分の気持ちを暴露して、応援なんてしないって。嫌な女になれて。
すっきりできたかもしれないのに。
悠里と颯真はお似合いだよ。
そんな悠里には、幸せになってほしい。
だから……今、わたしの胸がどれだけ痛んでも……
この痛みの矛先を、悠里に向けることはできないよ。
