そう言った悠里は、誰から見ても明らかだった。
少し頬を赤くして、伏し目がちに、
なにかを思い出してるよう。
悠里は……
きっと颯真のことーー。
「そ、そう?
あいつ、いつも意地悪で腹立つくらいだよ?」
「でも…根は優しい人だよね。」
「それ…は……」
悠里よりも、わたしのほうがよっぽど颯真のことを知ってる。
優しいところも。意地悪なところも。
高校になって初めて会った悠里よりも……
わたしのほうがよっぽど知ってるのに。
(分かったように言わないで……)
わたしの中にあるのはーー
醜い嫉妬心。
「わたしっ……
あっちで洗ってくるね!」
「あ。明里ーー」
悠里をおいて、わたしはシンクへと向かった。
これ以上、性格が悪くなってしまう前に。
悠里に当たってしまう前に。
わたしの気持ちが……
思わずあふれでてしまう前に。
「洗お……」
ついつい左指のことを忘れて、
わたしは蛇口をひねった。
