「もうすぐ夏だな。」



「もうすぐって言っても……
まだ3か月後くらいじゃん。」



教室に入ったわたしは、いつものように自分の席に座る。だけど、ふとわたしのそばに影ができて、思わず顔を上げると颯真がいた。



颯真の席は、反対方向なのに。



「なに?どうしたの?」



「夏祭りのチラシ。
もう街に掲示されてた。
お前ん家にももう回覧で回ってきただろ?」



「あー…そういえば、回ってきてた。」



「空けとけよ。」



それだけ言うと、自分の席に戻っていった。
と、同時に鳴り始めるチャイム。



(夏祭り……か。)



私たちの間では、夏祭りはちょっと特別な行事。



いや、わたしだけがそう思ってるのかもしれないけど。



「え。颯真、夏祭り榎本と行くの?」



そんな颯真と友達の会話が聞こえてくる。



「毎年の恒例…ってか、約束だからな」



「へぇー。ほんと仲いいんだなお前ら。
けど、今年も例年と同じように行けるんかよ?」



「何を疑ってんだよ。」



「や、お互い付き合ってる奴できたら行けねーだろ。」



その後の颯真の返事は、
他のクラスの子達の喧騒が邪魔になって聞こえなかった。



そうだな。っていう颯真の声は聞きたくなかったから、ちょうどよかったけど。



「今年は…行けるのかな。」



私たちは、変わっていく。



……いつまでも一緒ではいられない。