「俺は、いつだって本気だったよ。
ただ本当に……
明里をとられたくなくて、焦ってただけ。」






そう言うと、悠太くんはふっと目をそらす。







どこか表情を歪めながらーー
言葉を続けた。






「でもーー…
あいつももう、動き出すって言ってたし。
ゲームオーバーかも……だけど。」






「え……?」






まるで一人言のように呟くものだから、
わたしの耳までしっかり届かなくて。






思わず聞き返したけど、悠太くんは笑ってはぐらかした。





「夏祭り、1週間後だろ?
また、待ち合わせ場所連絡するから。」





「なんでーー」






「約束しただろ?
穴場スポット、連れてってやるって。」





ある休み時間の、ある時間。







わたしのノートの端っこに書かれた、悠太くんの筆跡。







"穴場スポット知ってるから。
楽しみにしてて。"







あの言葉は、まだあのノートに残ってる。






あの頃は、素直に悠太くんとの時間を楽しみたいと思ってた。





だから、毎年恒例だった颯真との夏祭りを、今年は颯真をふっ切るために、悠太くんと過ごそうと思ってた。




だけどーー…





「……悠太くん。
なんで、颯真に怒鳴ったの?」





「…………………。」





悠太くんに誘われた夏祭りよりもーー





何より、颯真とのことを気にしてしまうわたしは、
やっぱり何一つ変えられていないんだ。




悠太くんへの気持ちも。





……颯真への想いも。





「悠太くんの言ってた、"ズルい"って、なに?
"本当のこと"って、なに?」





一時の沈黙の後、悠太くんはハハッと笑った。





「結局……

颯真を心配するんだな。明里はさ。」