「な、なにっ。だれっ!」 人当たりのない路地裏に、 不気味な声が響いた。 『ユウイチ、ユウイチって。知ってた?世の中でバカな女ってのは、尻の軽い奴と、アンタみたいに頭の悪い奴のことを言うんだよ。』 奈緒は足元を見た。 そこには、泥まみれの汚い猫が一匹いただけだった。 「猫…?」 奈緒が思い出したのは、 少し奇妙な母親のおとぎ話だった。