「すみません。迎えに来れるのが僕しかいなくて……
兄がいればよかったのですが」


申し訳なさそうに頭を下げる雪君を見て、多恵さんがわたしに背中を向ける。


「蜜花さん、よかったら背負おうか?」


「え、あ、いえ。すみません、なんだか迷惑かけてしまって……
大丈夫です!」


「飛行機だとすぐなんだけどねぇ」


「多恵さん!」


雪君の強い口調に、多恵さんがはっとしたように口元に手をあてた。


「ご、ごめんなさいね」


多恵さんの顔が気まずそうに引き攣る。


「いえ、気にしないでください」


多恵さんが気に病まないように、わたしは笑顔を浮かべた。

多恵さんがほっとした顔に戻るのを確認した後、自分の足元を見て、自己嫌悪する。

舗装された道がないとは思わず、サンダルを履いてきた自分に。

離島というものをもっと調べてくるべきだった。

換えになるような靴は持ってきてないし、一週間の我慢だと気合を入れなおした時、雪君が背中を向けて、わたしの前にしゃがみこんだ。


「よ、よかったら……」


「え? えぇ!?」


彼の顔は見えないが、わずかに見える耳が赤い。

わたしと体形がほとんど変わらない雪君におんぶをしてもらう……

正直、想像できない。


なにより、自分の意思でここにきたのに、誰かに迷惑をかけることはできないと思った。


「雪君、あの、大丈夫です。
あの、本当、お気遣いなく……」