ただ寝ているだけのまま五年。

体の怪我以外、異常がないのに眠り続けていたわたしは、ある日突然目覚めた。

それこそ朝、太陽の光で目を覚ました子供のように。

そばにいた母は、口をつけようとしていた缶コーヒーを傾けたまま静止し、中身がこぼれて床も服もびしょびしょにしていた。

その様子を眺めながら、ここはどこなんだろうとか、お母さん年とった? とか、なんで体が動かないんだろうとか、頭がもやもやするなとか、一度に色々考えたことを覚えてる。

周囲の人にとっては五年たっていることがあたりまえだけど、わたしにとっては十五歳の体も、年をとった両親も、現実だと認めることがなかなかできなくて。

姉の死を受け入れるのにも時間がかかった。


頭の中身が小学生のわたしは、学校に行くこともできないし進学もできない。

病院を退院すると自宅で通信教育を受けた。

少しずつ、空白の時間を取り戻すために。

三年たってやっと、浦島太郎な状態から落ち着いてきたと思ってたんだけど。

そんな生活が一変したのは、ちょうどひと月前。

葉桜が目立つ、四月の終わり頃のことだった。


わたし宛に一通の手紙が届いたのである。

裏には姉、柚子の名前が書かれていた。