両親を出し抜いたことへの優越感や、目的を成し遂げた事への達成感。

後で怒られることも気になんてしなかった。


タイミング悪く、自転車のチェーンが外れてしまい、歩くしかなくなった時には、さすがに後悔したけど。

意地はって、暗い山道をひたすら歩いた。

人通りもないし、虫は多いし。

でも見上げた空は、星が瞬いて、とても綺麗だったことをよく覚えている。


星に目を奪われ、足を止めた時、異変に気付いた。

お腹に響いてくるような重い音が聞こえたから。

それは遠い空から自分に向かってきていた。

飛行機のエンジン音だと分かったのは、火を噴く機体を目にした時。

無意識のうちに耳を手で塞ぎ、わたしは絶叫していた。


あれは姉が搭乗している飛行機だとわかったから。


飛行機はかなり低い位置を飛んでいて、スピードもおちているようだった。


その後は……正直思い出したくない。


わたしがいたところから、飛行機が落ちた場所は数キロ離れていた。

それでも衝突時に発生した衝撃波を受け、重傷をおった体で現場に向かったことを覚えている。

十歳の少女に何故そんなことができたのか、本人ですらわからないけど。

墜落現場の詳しい様子や、状況、自分自身の行動は不明瞭な部分が多い。

生存者の少年がいたと思う。

でも後に聞いたところ、そんな乗客はいなかったらしい。

乗客116名は全員死亡が確認され、もちろん、そこには姉の名も並んでいた。

でもわたしがこのことを知ったのは今から三年前のこと。


わたしは事故から五年間、眠りについていたから。