「そうです。蜜花さんと一緒に歩いてきた道です。

雨により土砂崩れがおきて道の一部が埋まって
しまったんですが、そこに落雷をうけた倒木が重なってしまいました」


「じゃあ、通れないの?」


「そうです。でも問題は道が通れなくなったことではなくて……」


言葉を何度も切りながら、言い淀む姿に、わたしも段々不安になってきた。

気にはなったが、これ以上雪君を悩ませたくない。


「雪君、もういいよ。
神原さんを呼びにいかなくちゃいけないんだよね?
ごめんね、足止めしてしまって……」


「あ、いや、その。

……すみません。明日、詳しく父から話があると思いますので。失礼します」


雪君は頭をさげ、わたしの部屋がある方向とは逆の廊下へ歩いて行った。

わたしも部屋に戻ろうとしたが、部屋に入るまでに振り返る。

雪君は一番手前の扉をノックしていた。

あそこは『2』のプレートの部屋。

二号室だ。

少し間があって、扉が開く。

眼鏡をかけながら、パジャマ姿の神原さんが出てきた。

雪君がこちらを気にするように見たので、わたしは慌てて部屋の中に入る。
あの雪君の余裕のない様子から、きっとなにか大変なことがおこったのだろう。

それがなんなのか、その時のわたしには想像もつかなかった。

ベッドに横になった後も、気になってなかなか目を閉じることができない。

でも体は正直で。

次第に瞼が重くなり意識が途切れ途切れになった。

また雷がならなければいいな、と思ったのが最後。

その後の記憶は、ない。