その行動に驚いて雪君の顔をまじまじを見る。

雪君は恥ずかしそうに頬を染め、目をそらした。

耳にあてていた手を取り立ち上がると、雪君も一緒に立ち上がる。


「あの、ありがとう」


「いえ……」


雪君の優しさが、恥ずかしくて、嬉しくて。

でもちょっとだけ、胸がドキドキしていた。


「そういえば、蜜花さんはこんな時間に何をされていたんですか?」


雪君のもっともな質問。

別に悪いことをしていたわけではないのに、なぜか罰が悪い。


「雷で目が覚めたんだけど、廊下で争うような声がして……」


「争うような? それで一人でここに?」


「うん、まぁ……」


歯切れ悪く答えるわたしを見て、雪君はため息をついた。


「蜜花さん、仲裁しようなんて思わないほうがいいですよ。
あなたは女性なんですから」


顔をしかめて真剣な口調で言う雪君。

そんなことしようとしていたわけじゃない。

でも否定せず、素直に謝ることにした。


「ごめんなさい。
ところで、雪君はどうしてここに?」


雪君ははっとした表情になる。


「今、神原先生を呼びに行くところだったんです」


「神原さんを?」

雪君は迷うような顔をする。


「あの……あまり不安にはさせたくなかったんですが。
先ほどの落雷と雨のせいで、その……」


歯切れの悪い雪君の様子から、なにか良くないことがおこったんだと察する。


窓の外は、雷は遠ざかったようだが、豪雨と暴風により荒れ狂ったまま。

わたしは雪君の言葉の続きを待った。


「道が……塞がってしまいました」


「道?」


ここに来るときに歩いた山道を思い出す。

雪君は頷き、窓の外を見た。