地の棺(完)

「ごめんね。謝って済むことじゃないけど……」


真紀さんを、千代子さんを殺したのがわたしだと思われていたという事実は、わたしの中に見えない傷となり深く刻まれた。

でも、仕方ないかもしれない。

この家の中で、わたしは完全な部外者だから。

静まり返る室内。

しかし、苛立ち露わなシゲさんの舌打ちによって、皆の視線がドアの前のシゲさんに集中する。


「お前らな、甘すぎんだよ。なにが起きてるか理解してんのか?
人が殺されてるのに、呑気に人を疑ってごめんね、だと?
馬っ鹿じゃねぇの? 被害者以外誰もが加害者の可能性があんだよ。

快、お前もな」


シゲさんの激しい口調に快さんは唇をきゅっと横に結んだ。

シゲさんはつかつかとわたしの前に移動してくると、胸元に手を伸ばす。


「おいっ」


近くにいた初ちゃんが止めようと手を伸ばしたけど、シゲさんはそれを勢いよく払う。

そして首から見えていたネックレスを指でつまむと、鍵を取り出した。

シゲさんは空いた左手で鍵を掴むと、力任せにネックレスから引きちぎる。

首の後ろにピリッとした皮膚が裂ける痛みを感じて、手を回した。


「くそっ! お前っ なにすんだよっ」


立ち上がった初ちゃんがシゲさんに掴みかかろうとすると、シゲさんは中腰だった初ちゃんの顔を右足で蹴りつけた。

人の肉を叩きつける嫌な音。


「初ちゃんっ」


後ろに倒れた初ちゃんは、派手な音をたててクローゼットにぶつかる。


「シゲちゃんっ」


「うるせぇ」