地の棺(完)

共に生活していた身近な人物の死の衝撃は、きっとわたし以上に大きいはず。

神原さんの陰に隠れていてわからなかったけど、その後ろにはシゲさんもいた。

久しぶりに見たシゲさんは、目が据わり険しい表情をしていた。

ギロギロと視線を巡らせているのに、目があわない。

その変貌に嫌な予感がした。

二人が部屋に入ると、快さんは鍵をかけ、布団の上に戻った。

神原さんはその隣に腰掛け、シゲさんはドアを背にもたれかかる。


「ちょうど良かった。今蜜花ちゃんがいなくなってた間の話をしてたんだ」


「どこまで話されてるんですか?」


「ちょうど俺と初が気を失った母を部屋に運んだところまで」


「ああ、じゃあそれからの事は私が話した方がいいですね」


「うん、お願い」


快さんからバトンを渡された神原さんは右手で眼鏡の位置を直し、わたしのいる方向へ体を向ける。

片側だけ蜘蛛の巣のようなヒビがはいったレンズは視力を補えているのか疑問だけど、ないよりはマシといったところだろうか。


「快さんと初さんと別行動をすることになった私達は、屋敷の中は探し尽くした後だったこともあり、庭に出ました。
大旦那様がつくられたお庭は広さこそありますが、視界を妨げるようなものはほとんどありませんし、遠くに離れない事を条件で三方向に分かれて。

わたしは玄関の前のガーデニングコーナーを、秋吉さんは日本庭を、そして多恵さんは私達の両方が見える庭の境目に。

でもそれが間違いでした。

離れるべきではなかったんです」