四号室。

自分自身が現在いるこの部屋。

なんとなく部屋の中を見回した。

その時、ふと違和感を感じる。

なにが、とは言えない。

でも、さっきまでとはどこか違う気がした。

引っかかるものを感じたわたしの隣では、快さんの話が続く。


「母にも扉越しとはいえ話してたんだけどね。
蜜花ちゃんと椿がいなくなったことは。
それでも雪を連れ去ったのは……ごめん。蜜花ちゃんだと思っていたらしい。

四号室にはもちろん誰もいなくて、そこからは闇雲に雪を探し回る母を追いかけてたよ。

先生とシゲちゃん、多恵さんには蜜花ちゃんと椿を探してもらって、俺と初は母と一緒に雪を探した。

でも誰も見つからなかったんだ。

結局、泣きつかれた母は倒れてしまい、俺と初は母を部屋に運んだ後、そのままそこで先生達を待った」


桔梗さんが雪君をどれほど大切にしているか身をもって知った今、その心境を想像すると胸が痛い。

言葉を切った快さんの顔が辛そうに歪む。

その時、ドアをノックする音が聞こえて、思わずビクッと体が跳ね上がった。


「神原です」


ドアの向こうから聞こえた神原さんの声。

快さんがドアに近づき鍵を開けると、疲労の色が濃い神原さんが割れた眼鏡をかけて立っていた。

神原さんはわたしを見るとほっとした顔で微笑む。


「良かった。無事で……」


目の端に涙が滲み、神原さんは慌てて手で拭った。


「あ、すみません。ちょっと……立て続けに色々ありすぎて……」


建前ではなく、本当にそう思ってくれたんだと伝える神原さんの涙。

多恵さんや亘一さんの死を目撃した悲しみはどれほどのものか。