快さんは深く息を吐いた。


「まず、蜜花ちゃんがいなくなった頃の事は初から聞いてる?」


「いいえ、なにも……」


「俺と多恵さんが一階から戻って来た時、四号室の鍵は開いたままになっていた。初はまだ寝ていて、蜜花ちゃんと椿の姿はなかった。

すぐに初を起こして聞いてみたけど、初は全然知らない、わからないというばかりでね。

最初は二人がなにか探しに行ったのかななんて思ってたんだけど、あまりにも戻らないから、五人で手分けして探すことにしたんだ。

一応、母と雪に声をかけたんだけど、二人とも母の部屋から出てくることはなくてさ。

まあ、閉じこもってるほうが安心だとそのままにしておいたんだけど、五人でまとまって探してると、母の絶叫というか、悲鳴が聞こえてきたんだ。

ちょうど穴に落ちたんじゃないかと和室にいたからね、すぐに駆けつけると、うつぶせの状態で手足を縛られ、目隠しをされた母が髪の毛の刈り込まれた姿で廊下を這っていたんだ。

まるで芋虫のように」


快さんの淡々とした口調が、その時の情景を思い描かせて怖かった。

桔梗さんの手入れの行き届いた長い髪を思い出し、恐怖が募る。


「母はそんな姿で雪の事を探していた。
寝ていた間に目隠しをされ、身動きがとれないようにされたみたいでね。

耳にわずかな雪の声が聞こえて、起きたものの、誰がやったのかわからなかったらしい。

母の部屋の近くにいた俺たちは、雪のことも、雪をつれさった人物の姿も見てはいない。

母の部屋から穴が開いている和室は一つの廊下でつながっているにもかからわずね。

母の手足を縛っていたガムテープを剥がし、目隠しをとると、母は一目散に四号室へと向かった」