「すぐに開けます」


立ちあがり、足の裏に力を入れるとずきっとした痛みで体がふらついた。

初ちゃんに向かって倒れかけ、初ちゃんは慌てて横に飛びのく。


「ごめん。大丈夫」


苦笑いしながらなんとかドアまで歩いたわたしは、鍵を開けてドアノブを回した。


「遅くなってごめんね」


そういって顔を見せた快さんは、やつれた笑顔で部屋に入ってくる。

三本のミネラルウオーターと桃の缶詰、赤貝の缶詰、ミックスビーンズの缶詰を両手に抱えた快さんは、初ちゃんの座る布団の隣に腰掛け、手の中のものを床に広げた。


「こんなんで悪いけど、食べて」


快さんはシャツの胸ポケットから小さなフォークを三本取り出し、缶詰の上に並べる。

初ちゃんは迷うことなく桃の缶詰を手にし、快さんに


「レディーファーストって言葉を知らないかな、君は」


と言われ、顔を赤らめた。


「快さんはどちらがお好きですか?」


赤貝とミックスビーンズを手に取り快さんに見せると、快さんは軽く首を振る。


「俺はどっちも好き。だから蜜花ちゃんが選んでいいよ」


赤貝かミックスビーンズ。

どちらもメインで食べた事がないけれど、食欲があるわけじゃないので食べやすそうなミックスビーンズを選んだ。

ベッドに腰掛け、缶を開けようとすると、初ちゃんが罰が悪そうな顔でわたしに桃缶を突き出す。


「こっちがいいならやってもいいけど」


そういう初ちゃんはそっぽを向いていたけど、耳は赤く染まっていた。