何度も嘔吐を繰り返している神原さんは目が落ちくぼみ、、憔悴している様子が見て取れた。

取り乱さないように自分の感情を抑えることに必死なわたしや、泣くことしかできなくなっている多恵さん。

荒ぶる感情で今にも破裂しそうなシゲさんは、攻撃的になっている。

快さんはしゃがみこみ、多恵さんと目線を合わせた。


「多恵さん、一階に南京錠あったよね?
どこにあるかわからないから、一緒についてきてくれる?」


そういって微笑みながら右手を差し出す。

多恵さんは涙を拭きながら、こくこくと頷いた。


「俺と多恵さんは一階の納戸に行ってくる。
戻ってくるまで、神原さん、それとシゲちゃんでここにいてもらえるかな?」


シゲさんは返事こそしなかったが反論もせず、窓の外に顔を向けている。

神原さんは力なく頷いていた。

多恵さんは快さんに手を借りながらよろよろと立ち上がっていたが、すぐに、はっとした表情になり、


「あの、奥様の食事の用意もしなくちゃいけないんですけど……」


と、思い出したように言う。


「こんな時に食事って……うちのお母様の呑気なこと」


快さんは苦笑した。


「鍵取りに行ったついでに持っていってあげましょ。
缶詰でも渡しときゃいい。
で、その間に初は蜜花ちゃんと椿を迎えに、でいい?」


「やだよ。行きたくないって言ったじゃない」


初ちゃんが即答した。