夢の中だけでいい。


姉さんと一緒にいたいよ。一人にしないで……



すると、体がふわっと宙に浮く感覚がした。

自分の体が、自分のものじゃないような不思議な感じ。

意識が離れかけてるからかもしれない。

背中を包む柔らかな感触。

ふと気が付くと、人の気配が消えていた。

必死に目をこじ開け、部屋を見回すけど、誰もいない。


夢?

いや、違う。

わたしは床からベッドの上に移動していた。


夢じゃなかった?

鍵をかけ忘れていたから、部屋には誰でも入ることができる。

でも……


わたしは部屋に残るミントの香りに包まれながら、姉の幻に想いを馳せた。




そして夜は更けていく。

闇の中から新たな犠牲を生み出して。



翌朝。

仮初を保とうとしていた私達を揺るがすものが見つかった。


最初に発見したのは、朝食の準備のために厨房に向かおうとしていた多恵さん。

彼女は食事の部屋のダイニングテーブルの上に飾られたものを見て悲鳴を上げ、気を失った。



多恵さんが見たもの。


それは体を上半身と下半身に分断された、千代子さんの体だった。