次の刹那。

ドアが破壊されるかのような勢いで、激しく叩き付ける音が部屋に響いた。

振動で部屋が揺れるほどの荒々しさ。


「雪さん? いるんでしょう?
開けなさいっ」


甲高い女性の声。

雪君の顔が瞬く間に強張る。


「母さん……」


桔梗さんは更にドアを叩き続けた。


「開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。開けなさい。

開け、なさいいいいいいい!」


恐怖に包まれ動けないわたしに代わり、雪君がドアに近づく。

深呼吸をした後、ゆっくりとドアノブを回した。

軋しむ音を立てながら扉は開き、その先には髪を振り乱し、悪鬼のような形相の桔梗さんの姿があった。

着物は着崩れ、握りしめた手は所々血が滲んでいる。


「やっぱりここにいたのね」


そういって鬼女は柔らかな微笑みを浮かべた。