「はい。あまりにも深い穴のため、なんとか埋めることができないかと村の建築会社の者に相談をしていた時、父が手にしていた松明を落としてしまったそうです。
落ちていく明かりを目で追うと、底で寝そべる女性の姿が照らされ……発見にいたりました。

その穴はタコツボのような形をしていたため、女性の力では這い上がることができなかったようです。
また、唯一そこへ通じていた抜け道は、とても小さく、女性の背よりも上のほうにありました。
光がない暗闇で、女性がそれに気づくはずもなく、彼女はそこに一年もいたのです」


「一年もって……まさか、生きて?」


雪君はわたしの目をまっすぐに見つめ、ゆっくりと頷いた。。


「女性がいた部屋には、様々な生き物の骨が散乱していました。
兎や狸。猪、鹿、そして……人間のものが」


人間……も?


「その抜け穴はこの家の裏山にある崖下とつながっていました。
そこから転がり落ちた動物なんかを食べていたんだと思います」


「ま、待って。人間……人間ってどういう……」