小太郎が死んだ。

小太郎は、牧場からもらってきた犬だった。兄弟の輪から外れて隅っこにいる小さくか弱い犬を、当時登校拒否をしていた妹が選んだ。
そんな小太郎も成長すると大きく、それこそ近所で一番大きな犬になった。けれど、私たちにとって小太郎は、小さな小太郎のままだった。
こんなに愛らしい犬が他にいるだろうかと思った。もっとも、大きく黒い身体は、可愛らしさとはかけ離れていたし、顔立ちも優れたほうではなかった。けれども、愛嬌にあふれていて、不思議なくらい、人の気持ちをわかっていた。