地面に放り投げてあった鞄を持ち上げ、足を一歩踏み出した時、
「帰っちゃうの?」
と甘ったるい声が聞こえてきた。
声がしたほうへと視線を向けると、そこには可愛らしい子がこちらを見ながらニコニコと笑っている。
私にはこんな知り合いはいない。
変なのに絡まれたのかと思った私は、その子を無視したまま改札へと突き進んだ。
「えっ?あれ?ちょっと待って!!」
再び、背後から聞こえる甘ったるい声。
聞こえてはいるけど、あんなの無視、無視。
「ねぇ、ねぇ、待って!!」
大きな声がしたと思うと、私の体は動かなくなる。


