「お二人さ~ん。僕ちんのこと忘れないでねぇ」
このピリピリした空気を無視して、相変わらずふざけたことばっかり言っているリュウは、ここで“さよなら~”って訳ではないらしく、しっかりと私達の後ろを着いてきている。
こんな状態でジュンと二人きりにされるくらいなら、こんな奴でも居てくれたほうがマシだけど。
「ち、ちょっと、ま、待って」
「あっ?!」
いや、この人は何でこんなにもご立腹なんだろう。
私がやり逃げしたからか……いや、やり逃げしたわけじゃないんだけどね。
まずは誤解を解かなくちゃ。
「何だよ?!さっさとしてくれ」
「やり逃げなんて、そんなつもりないから!!」
ジュンがあまりにも威嚇してくるから、思わず大きな声が出ちゃった。
焦りすぎて声が大きくなることってあるよね?!
「お前なぁ、ここどこだかわかってっか?マンションの廊下は公共の場。ちなみに俺んちのドアの前。中に丸聞こえだろうが!!」
「えっ?!中に誰かいる?もしかして、もしかしなくてもジュンのご両親どちらかだよね?!」
「両方だ。さっさと中に入れ、恥ずかしい」
待って、本当に待ってよ。
私にはもう何がなんだかわかんない。
なんでジュンの家に来てるのかもわかんないし、ジュンが何に怒ってるかもわかんない。
立て続けに色んなことが起こりすぎて、もうやだ。
「純麗ちゃん、面白すぎだし!!」
いつの間にか私達に追い付いていたリュウがギャハハとお腹を抱えて笑ってる。
そんなリュウに「お前らいい加減にしろよ。うるせぇ」とジュンはさらに眉間の皺を深くする。
私、なんか泣きそう。
混乱しすぎて泣くなんて始めてだよ!!
「えっ?!純麗ちん?何で泣いてんの?」
「マジでうぜぇ」
女の子が泣いてるのに……
「もう、やだ」
そんな顔して、そんなこと言わなくてもいいじゃん。
「私、帰る。だから、ジュン離して。リュウどいて」
「ジュン、鍵開けて」
「もう、開いてる」
「じゃあ、ドア」
私の言葉は無視されたまま、続けられた二人の会話が終ると、腕を引っ張られ、背中を押され、ジュンの家の中へと強引に入れられた。


