開けっ放しの扉を閉めて、ソファーに戻ると
「悪かったな」
とジュンが小さく頭を下げた。
「契約でしょ?私の役目だから」
「それにしても……予想外だった」
さっきの威勢はどこへいったの?というくらいしゅんとしているジュンは、私と目を合わせようとしない。
「何が?」
「美織がお前のことを調べるなんて予想外だった」
いつもは、嫌ってくらいに真っ直ぐに私を捉えて離さないのに。
「そういう予想外のことが起こってもいいように、打ち合わせくらいはしたほうがいいと思うよ。私にはもう関係ないけど……次があった時には」
「ないよ。次はもうない。美織もさすがに懲りただろう」
「そうね。あんな風に怒鳴られたら、好きな気持ちもぶっ飛びそう。テーブル、蹴り上げるのはやりすぎだし」
私がクスッと笑うと
「だな」
と言いながらジュンも笑う。
「契約とはいえ、本当に悪かったな。傷つけるつもりはなかったんだ」
「もう、いいって」
「けど」
「気にしてないし……」
それに、演技でもジュンが私を庇ってくれたことが嬉しかったから。
すべてが偽りだったとしても、ジュンの言葉に嬉しすぎて涙が零れそうだったから。
「わかった」
「私はそんなことで傷つくように見えないでしょ?」
「あぁ」
もう十分だよ。
私のほうこそ、ありがとう。
「なんたって体売ってるんだから」
「おま……え」
眉をへの字になんかして情けない顔をしているジュンを見ないように、私は立ち上がりジュンに背を向けた。


