幸せになる方法〜「ずっとそばにいたのに.....」スピンオフ〜

「はい、じゃ、手。」

「お手々?」

「うん。」



彼女の手を取るのはまだ何となく恥ずかしかったから、温人の小さな手を取り、しゃがんで、小指と小指を絡めた。

自分で言っといて何だけど、知り合ってから数か月経つのに、今さら呼び名を変えるって、想像していたよりも勇気がいることらしい。

いざ言おうとしたら、彼女の名前がスムーズに出て来てくれなくて驚いた。

だから、これは単なる約束じゃなくて、自分を落ち着かせるためのワンクッションでもあるんだけど。



「指切りげんまん、嘘ついたら、針千本、飲~ます、指切った!!」

「ゆびきい?」

「そう、指切り。約束って意味。」



つっても、もちろん、温人には意味なんてわからないだろう。

なのに、こいつは本当に嬉しそうに笑ってくれるから、簡単に場が和み、すぐに空気が暖まるのが有難い。



「おにぎり、ありがとう。休憩室で頂くね。」

「うん。こちらこそ、ありがとう。」

「じゃ、もう行くわ。そろそろマジで時間ヤバいから。」

「あ、何度も引き止めちゃってゴメン。」

「ううん、来て良かった。温人にも会えたし。じゃあ、また明日ね、智沙さん。」

「うん。仕事、頑張ってね.....友哉くん。」

「うん。温人もまたな。」

「バイバイ、友くん。」

「おう。バイバイ。」