幸せになる方法〜「ずっとそばにいたのに.....」スピンオフ〜

彼女のアパートは、はるとをおぶって片手で傘を差した状態でも、そこから10分もかからない場所にあった。

通勤には便利だろうけど、今日の俺にしたら、早く着き過ぎて残念なくらいの距離だ。



「本当にありがとう。」

「役に立てて良かった。はるととも仲良くなれたし。」

「この子、普段、私とお母さんと保育園の先生くらいとしか話さないから、男の人、苦手なのに。」

「そうなの? あ、これでも俺、癒し系キャラだってよく言われるから、子供にもそれがわかったとか?」

「ふふふ.....そうかもしれない。」

「でしょ? ねぇ、はるとって名前、田中さんがつけたの?」

「うん。温かい人って書いて、はると。」

「へぇ、良い名前だね。」

「ありがとう。この子には、横森君みたいに優しい人になってもらいたいと思って。」

「.....あ、いや、俺なんて、そんなに優しくないって。」

「そんなことないよ。温人が生まれてから、誰かにこんなに思ってもらったことないもん。頑張ってると、イイことあるんだなって、ちょっと自信ついた。本当にありがとうね。」

「そう思うんなら、もっと頼ってくれていいよ。」

「でも、それじゃ.....。」

「いいの。温人にも、また会いたいし、このくらいのことで喜んでもらえるんなら、俺も嬉しいから。」

「そう?」

「うん。マジで遠慮しないで、何でも言って。」

「.....ありがとう。」