あの日、些細な事で喧嘩になった。

原因は、はっきりと覚えている。

毎日毎日聞かされるお前の仕事の愚痴をあの日、俺は聞いてやれなかったからだ。

俺は疲れてたんだ。
あの日は久々に残業なしで帰った。

だからこそ、お前との時間を大切にしなければいけなかったのに、俺はテレビに夢中になったんだよな。
お前だって、ゆっくり話を聞いてもらいたかったはずなのに。

「もう!テレビばっか見てないで、話聞いてよ!」って言ったお前に、少しいらだってしまったんだ。

その時、いつものように、
「頑張らなくていい、無理しなくていい。疲れたら休めばいいよ!」ってお前がブサイクな笑顔を見せてくれる魔法の言葉を言えばよかったんだ。


「結婚しても仕事続けたいって言ったのお前だろ!?いちいち下らないことを毎日毎日グチグチと、聞かされるこっちのみにもなれよ!」

本気で思った訳じゃない。カッとなって出た言葉だったんだ。

俺が働くのはお前を守るためだよ。

お前が働くのもまた、俺の為だったんだよな!?



泣きながら家を飛び出したお前を、冷静になって追いかけるまで、少し時間がかかってしまってお前を見失ったんだ。



お前がいる場所、俺には分かってるから。
迎えに行くよ!