「でもね、だから、今回の映画で共演できるって知ったとき、とっても嬉しかったの」


母だと名乗り出ることができなくても、息子を、近くで見ていられる。

上条司が俳優として、人間として成長していく姿を見られれば、それだけで幸せだと思っていたそうだ。

麗華さんの話を聞いている間、司はじっと下を向いたまま、何も言わないでいた。



「ごめんね、司。
余計なことして。
だけど、あたし、どうしても麗華さんが司を捨てたなんて思えなかったから。
忘れたなんて、思えなかったから……
実験して、試してみたかったの」


「……」


「余計なことして……怒ってる?」


司は

「おせっかい……とは思うけど、怒ってないよ。……ありがとう」

そう言いながら、立ち上がった。


そして、床に座り込んで泣いている麗華さんに、手を差し出した。


「俺が刺されたって聞いて、心配して駆けつけてくれて、ありがとう。





……母さん」