美羽は、左手の薬指の先が有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)という皮膚がんになってしまい、第二間接から切断しなくてはならなくなったのだ。


指を失うということは、ピアニストを夢見て音大を受験しようとしていた美羽にとって、死の宣告を受けたかのような辛いものだった。


それで、斧で自分のピアノを叩き割ろうという暴挙に出たのだった。

美羽の手術は、翌日に控えている。


事情を聞いた拓也は、少し考えて、こう答えた。


「大丈夫、手術後でも、君がピアノを弾けるような魔法をかけてあげるよ。安心していい。
君はこれからだって、君らしくピアノが弾けるから」