「ちょ、ちょっと待った!君、何をやってるんだよっ」


開け放してあった窓から、司が――拓也が飛び込んできて、あたしの手をガシっとつかむ。


「えっ、ちょっと、誰よあなた! ほっといてよ、こんなもの壊すんだから!」


なんとか斧を振り下ろそうとするあたし。


「どうせ、あたしはもう弾けなくなるんだから。いらないのよ、ピアノなんて!」


「いいから、落ち着けよっ」


拓也はあたしの手から斧を取り上げる。


「いったい、どこからこんな斧持ってきたんだ……」


拓也は呆れたようなため息をつき、床にペタリと座りこんだあたしの前にしゃがみこむ。


「あのさ、どんな事情があって、ピアノを壊そうとしているわけ? 良かったら話してみなよ」