/誠実×強欲






――誠実のことが好きだって気づいたのは、あの時出逢ってからだった。

最初は、身を呈してまで守る君が可笑しかった。周りがどうなろうが構わない俺にとってはどうでも良かった、だけど守るために自身の力を使って俺の攻撃を防いでいったリアちゃんが、人に優しく誠実な君がとても愛しくなっていって。
――普通に考えればありえない話、君は綺麗な美徳の天使で、俺は汚れた大罪の悪魔。どう考えても触れ合うことなんて、愛し合うことなんてできないよね、どう頑張っても君に近づくことなんて、大罪を持つ俺にとっては絶対に無理だ。
それに、君に好きな人がいるかもしれない、それを考えると幾ら強欲の俺でも君に思いを伝えることなんてできなくて……軽蔑されたり、そんな人だって思われたくないなって思って、伝えるのをずっとずっと躊躇った。どんなに辛くても嫌われることだけは絶対嫌だったから。

「嘘、だ……」

その思いを隠していたのはいけなかったのかもしれない。綺麗な朱に染まる君、何時も「貴方は人を思いやり、誠実な気持ちを持つ必要があります!」って叱ってくれる君が、もうそこにはいなくて。
気がついたら目から何かが溢れてきてとても辛くなってきて、何時も俺はこんなのを見てきたはずなのに、今回だけはなぜか何かが溢れて止まらなくて。
――ああ、これも俺の罪なんだろうな。君に気持ちを伝えなかった、その表の顔を優先した罪は深く自分にのしかかって。君に触れたかった、でも俺は触れちゃいけない気がしたんだ。触れることなんて、交わることなんて、無いのだから。
でも神様、この思いだけ、この言葉だけははせめて君に言わせて。居なくなっちゃったからこそ伝えられる俺がとても悔しくて醜い、けれど今伝えなきゃ後悔するような気がして。

「好きだよ……誠実……」