――ああ、また買ってきてしまった。

コンビニを出たジャージの少女は、はぁと大きなため息をついた。目の前に広がる白い息と、道路を走る車やバイク、バスを横目に、下を見る。
彼女の左手には大きなポップコーンと小さな綿菓子が入ったコンビニ袋と
残金30円となったキャラものの小さな小銭入れが握られている。小物入れを除けばコンビニで買った物。

ジャージのポケットからスマホを取り出す、少しかじかんだ手でロックを外し、今の時間を見る。ディスプレイに出たアナログ時計は夕方の5時半を指していた。
ロックをかけ直してポケットにしまい込む、冷たい風がさらに両手を悴ませて。

「いーかげん、やめないといけないの分かってるんだけどなぁ……」

それでもやめられない「お菓子を食べたいという衝動」彼女のこの衝動が始まったのは、つい最近だ。
両親の離婚に伴う転校と転居、そして登校拒否をしている今の現状、唯一ストレス発散となっていたミュージカルの習い事は先生があるひとりの少女を贔屓しだして見えた「黒い面」のせいで、通う気はもちろん、やる気もなくなり逆にストレスとなっていた。

それからというもの、お金があればネットゲームの課金か、いつもやっているカードゲーム、それかお菓子にお金を使うようになっていった。暴飲暴食やネットゲームの敵に当たることでしか、溜まったストレスを発散しきれなくなっていって――

ゆっくりと帰路を歩きつつ、耳に入る機械音や歌手の音声を聞き、家へと向かう。
そんな彼女がこの衝動から何時抜け出すのは――誰もわからない。