君想い【完】



カーテンの隙間から、眩しい朝陽が1本の線を描いて差し込む。
それが僕の毎朝の目覚ましになる。

寒いのを我慢してまだ温かいベットから起きると、下からまな板を叩く包丁の音がする。

スウェットを引きずりながらリビングに入ると、毎日同じ顔ぶれが並んでいる。

「はよ。」

そっけない返事をして、
洗面所に行くといつも同じ場所に姉貴のコテが置いてある。

僕は何度も火傷をした。

最近では気を使いながら顔洗っている。

「姉貴。もうコテだいぶ熱くなってたよ。たぶん。」

「あ!コテ温めてんの忘れてた。」

「お前いつかこの家を火事にするな。」

そんな会話に両親が笑顔を見せる。

僕はこの家に生まれてよかったと時々心から思う事がある。

中学3年生の頃、毎日そう思った。
この家族でよかった。毎日思った。